- 塩分過剰摂取と摂取不足
塩分がないと、地球上の多くの生物は生命を維持することができません。生命にとって塩分は、欠かせないものなのです。しかし、塩分の取り過ぎは高血圧や腎臓病、心臓病などの原因となります。そのメカニズムは完全に解明されてはいませんが、一般には血中のイオン濃度を一定範囲に保つため水分を取るようになり、血液を含む体液の量が増え血圧が高まるとともに、これを体外に排出するのを司る腎臓に負担がかかるためとされています。
2005年(平成17年)版の「日本人の食事摂取基準」では、1日の塩分摂取量を男性成人で10g以下、女性成人で8g以下を推奨し、同時に高血圧を予防するために、過剰なナトリウムを排出する作用のあるカリウムの摂取基準も定めています。カリウムは野菜や果物に多く含まれています。日本の食生活指針と健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)では1日10g以下を目標としています。 2003年、世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)による「食事、栄養と生活習慣病の予防」では、1日5g以下(ナトリウム2g以下)とされ、中国の広東式の塩蔵の魚は鼻咽頭癌のリスクを上げ、塩や塩蔵の食品は胃癌のリスクが上がることが起こりうるとされています。
2007年11月1日の世界がん研究基金とアメリカがん研究協会によって7000以上の研究から分析したがん予防の報告書では、中国の広東式の塩蔵の魚は鼻咽頭癌のリスクを上げると報告しています。 しかし、現在では、塩分の過剰摂取を恐れるあまり塩分を控えることが常識となってしまったため、極端な塩分の制限により塩分の不足が起こり、昏睡状態となって病院に運ばれる者や死亡する者も出ています。命を取り留めても、慢性的に塩分が不足していた場合、血中のイオン濃度を低いレベルで一定範囲に保とうとするように体が変化してしまっているため、一般的な塩分の補給量ではすぐに塩分が排出されてしまうので、長期間にわたって塩分を大量摂取する治療を行わなければならなくなります。 また、上記ほどの塩分の不足でなくても、炎天下の運動の際等、汗をかいた際には水分だけでなく塩分も排出されるが、それにも拘らず水分だけを補給すると血中のイオン濃度が低くなり、体は血中のイオン濃度を一定範囲に保とうとさらに汗をかいたり排尿しようとしたりするため、さらに水分不足となり熱中症や痙攣を引き起こす場合もあります。そのため、高温環境下で作業を行う鋳物工場などでは、作業員の塩分補給用に食塩が置かれています。
現在いわゆる食塩として販売されているもののほとんどが、イオン交換膜製塩法によって生成された塩化ナトリウム99%以上のものであることも問題視されています。食塩の相当量は以下のような計算で求められます。
食塩相当量(g)=ナトリウム(g)×58. 5/23=ナトリウム(g)×2. 54
かつての食塩は、マグネシウム、カリウム、カルシウムを含んでおり、それらをほとんど含有しない現代の食塩ではナトリウムのみに偏って過剰摂取することになってしまいます。またカリウムにはナトリウムを体外に排出する効果があるので、それを含まない塩はなおさらナトリウムの過剰が問題になります。上記の塩分の過剰摂取の問題も、実際には塩というよりもナトリウムの過剰摂取の問題と言ったほうがよいでしょう。 なお、近年は塩化カリウムを添加し塩化ナトリウムを50%程度まで減らした低ナトリウム塩も登場しています。
